「夏の足音」


たまには違った、ちょっぴりホラーな話でも書こうかと思う。それは遥か昔、管理人の若かりし頃の話だ。


遠い昔のこと。友達と真夏の夜にどこかに肝試しがてら探検に行こうという話になった。

俗に言う心霊スポットだ。管理人はこう言った事も含めて冒険、探検、探索、散策が大好きなのである。

近場で手頃な川沿いの廃ホテルを選ぶ。2二人で川沿いの廃ホテルの所在地を調べる。有名な廃墟なのですぐに場所は割り出せた。

時刻は22時過ぎ・・・今から向かえば夜の探検にはうってつけの時刻である。

早速友達の車に乗り込む。某国道を南下。途中でシケた道へと入る。辺りは真っ暗で車通りもほとんど無い。

まれに大型トラックが走っているくらいだ。

「いい雰囲気が出てきたな」

などと余裕な事をこの時はほざいていた。





この廃ホテルに行くには国道より廃道に入らなければならない。国道からその道に入ろうとした時に大型トラックが停まっていた。

「関係無いだろう」と判断しそのまま進む。現地に着くと小高い岡の上に廃ホテルは建っていた。

山奥なので明かりは一切無く、ただ川の流れる音が聞こえるだけだ。

夏なので他に人間が来ているだろうと思っていたが、他に車やバイクは見当たらない。

すると川向こうにから電車の走る音が聞こえてくる。終電かいな?、とさほど気にも留めずにいた。


車のライトを消すと暗闇に支配される。懐中電灯を持ち廃ホテルへと向かって行く。

ホテルの前まで来ると準備の為に暫し立ち止まる。

・・・その時だった。「バタン!!ガタッ、ガタッ」

非常扉の閉まる音がし、更に何かの物音が鳴り響く。そして物凄い勢いで足音が近づいて来る。

場所が場所だけにこれには二人も焦り、即退散することに。こんな場所で不可解な行動をする奴など正気の沙汰ではないだろう。

車の場所まで戻り即座に乗り込む。エンジンをかけ一呼吸置こうとすると急に相棒がフルアクセル。

その顔からは恐怖と焦りの色がにじみ出ていた。

リアがホイルスピンして「ガラガラガラ」と砂の上を滑る音が響く。

「おいおいおい!?」

と思わず声を上げる。猛スピードで廃ホテルを後にした。


帰り国道沿いのコンビニに寄る。勿論ここまで無言で猛スピードで到着。相棒も少しは落ち着いたみたいなので話を聞く事にした。


「何があった・・・?」


すると管理人の予想もしていなかった事を口にする相棒。


「俺達の後ろから誰かがずっと走って追って来ていた・・・」


何でも相棒が逃げている間、後ろから足音が絶え間なく聞こえていたらしい。

そして車に乗り込む時、車に乗り込みエンジンを掛ける時と絶え間なく足音は確実に我々の方へと近づいていたと言うのだ・・・。

だが管理人はそんな足音は一切聞いていないし、退散時に相棒の事を気にかけ後ろを数回振り返ったが何も見えなかったし聞こえなかった。

しかし、それが嘘ではないと相棒の顔を見れば誰でも分かる。


その事をふまえて我々は話し合った。



1つ目の疑問「非常ドアが閉まるような音がした事」

これは不思議ではない。単に先客がいたということだ。

この時頭の中に疑問が生じた。あの日は車やバイクが一切停まっていなかったのだ。絶対にか?と言われれば解らない。

だがこんな山の中だ。常識的に考えて何らかの足を使うに違いない。それにこの廃ホテルに限って言えば車を別の場所に停めるメリットも無い。

ホテルの場所が解らず歩いて探してやっと見つけた、とも言えるがそんなことを言い出したらきりが無い。

1つ可能性があるとしたら廃道の入り口に停まっていたトラックだ。

我々はトラックの運ちゃんのことはよく知らないので何ともいえないがわざわざ寝る時間を惜しんで廃墟などに行くだろうか?しかも一人で。

このように帰りの車の中でいろいろ話し合ったが、結局結論は出なかった。



2つ目の疑問「謎の足音」

これに関しては私は全くわからない。さっきも言ったがそんな足音は聞いてもいない。ましてや足音の正体も見ていない。

先に書いたが、退散時に私は相棒の方へ振り返り無事か確認のため懐中電灯を当てているのだ。

何かが追ってきていれば私の視界に入ってきているはず・・・。

車に乗り込む前後にも足音が聞こえるというのもおかしい。何の意味があるのだろうか?

こちらも結局わからずじまいだ。



帰り道中、のどが渇いたので自動販売機で私はジュースを買った。

するとなんと当たりだ!普通喜ばしいことだが・・・実は行きしなに相棒がジュースを買い当たりが。

何とも不思議な夜の探検だった。


今回の教訓・・・んなにジュースばっかりいらねえよ。