ツーリング時のとある出来事


鳥取県の大山ににツーリングに行ったときの話だ。

この日も早朝から張り切って高速を飛ばし鳥取県を目指した。 ほぼ快晴で気持ちの良い秋晴れ。





大山の周回路を走り夕方近くに帰路に着くことにした。

高速のインターを目指し愛車を走らせる。人気の無い片側二車線の県道を快走していると、幅員減少の看板が姿を現す。

間も無く一車線もない程の道幅で狭く汚い道になっていく。

外灯もガードレールもなく路面もボロボロ。気が付けば民家どころか人気も全くなくなってた。

「ん〜、道間違えたかな??とりあえずこのまま進んでみよう」





まあこんな道なんて慣れっこなので何の問題もない。

しばらく走っていると、前方にテールランプの明かりが見えた。「チィ…」軽く舌打ちをする。

ライダーなら分かって貰えると思うが、こんな道でノロイ車が前にいると邪魔で仕方ない。

追い越しも難しい。回りをよく見れるドライバーなら譲ってくれるので問題ないが…。

前の車がペースを上げたのか、なかなか追い付く事が出来ない。それどころか、差が開いてきているように思える。

「こちらを意識してペースをあげたのか?その方が助かるけどな…」

そんなことを思いつつ県道を進む。しばらくしておかしな事に気が付いた。

前の車、テールランプは見えるがヘッドライトの灯りが見えない。直線ならともかく、カーブでも見えない。

そのうちその車は私の視界から消えてしまった。

気のせいかもしれないが本当に忽然消えたような気がするけど…。

山頂付近に差し掛かるとトンネルが見えてきた。このトンネルを過ぎれば下り坂になるはず。

もう辺りは真っ暗、愛車のヘッドライトだけが頼りだ。

トンネルを過ぎると街の夜景が見える。





「綺麗だな…」

時計を見ると19時を回っていた。急がねば。

峠を越えても悪路は続いた。すると前方に灯りが見える。外灯ではなさそうだ。

休憩所?ドライブイン?こんな辺鄙なオンボロ県道なんかによく作ったな、と悪態をつく。

疑問はあったものの疲れていたので一服する事にした。車が数台停まっており大型トラックも停まっている。

自販機も多くあり休憩所もある比較的立派なドライブインだ。

「こんな場所で採算合うのかね?」なんて言いながらコーヒーを飲もうと自販機へ。





…妙だな。売っている飲み物がどう考えても一昔前のものばかりだ。

それにしては販売機自体は新しいし蜘蛛の巣等もなく手入れも行き届いている。

気味が悪いので他の自販機がないかと休憩所に入ることにした。

中に入ると休憩所があった。椅子やテーブルが無造作に並んでいる。

トラックの運ちゃんらしき人物がテレビを眺めている。向こう向きなので顔は拝めないが。

よく見るとトラックの運ちゃんから離れた場所に若い女が2人座っている。遠目で見ても明らかに何か警戒しているような感じ。

2人が私の存在に気が付くと、お互い顔を見合いヒソヒソ話を始めたようだ。

「俺の事が気になって仕方ないんだろうな」

と妄想しながら右の子は結構タイプだとか考えていた。

10分位して出発しようと休憩所を出ようとすると声をかけられた。あの女の子2人組だ。

「あの、ちょっと良いですか?私達○○インターに行きたいんですけど、道合ってるかどうか不安で。」

「ああ、俺もそのインター目指してるんだけど、道は合ってるよ」

どうやらこの2人、ドライブの帰りにナビに従い走っているとこの道に来たらしい。

「この休憩所って不気味じゃないですか?雰囲気というか…。それにあそこにいる男の人さっきからピクリとも動かないし…」

そういえばそうだ。言われて分かったがあのオッサンさっきから全く動いていない。

まるで置物のようだ…。気配がしないというか。

…ふと妙な事に気が付いた。トラックの運ちゃんであろうあのオッサン。ピクリとも動かないのはまだいい。

あの大型トラックでどうやってここまで来たのか、その方が問題だ。

来た道は勿論、先も同じ様な道であることはドライブインに入る前に確認してある。

自分の意見を伝えると2人とも青ざめ私に何かを求めんばかりにこちらを見てくる。

急に胸騒ぎがしてきたので女の子に早々にドライブインを出ようと提案、一緒に高速のインターまで行くことになった。

もちろん2人は車なので前を走るように指示する。


この後どこかで休憩しながらご飯でも一緒に食べようかな、何て都合の良い妄想をしながら出発する。

暫く走っていると…何か違和感を感じる。前の車がやたらと飛ばすのだ。

こちらも置いてきぼりにならないよう結構なペースで走っている。

最初は怖いからか、と思っていたが…。その時ふと妙な事に気が付く。

女の子の車のテールランプが先程の車に似ている。

しかもヘッドライトの明かりも点いていない。

「マジかよ…」 

スピードが更に増して端から見たら競い合っているようなペース。もう明らかにおかしい。パッシングをしてみるも無視。

これ以上ペースを上げるとこちらが事故を起こしかねないのでスピードを落とす。

女の子の車はそのまま猛スピードで私の視界から消えて行った。

「何なんだ…あれは?」

狐につままれたとは正にこの事。

この出来事は気味は悪かったが、楽しくなりそうな出会いもあったと言うのに…。

暫くすると山を下り高速のインターらしき明かりが遠目で確認できる。

いろんな意味で多少のモヤモヤはあるが、仕方ないのでそのままインターチェンジを目指した。





「無事にここまで辿り着けて良かったのかな」

「あ〜、あの子俺の好みだったのになぁ」

等と言いつつ関西方面へと岐路に着いた。今回の出来事は実に興味深いものだった。



これは後日談なのだが…。

家に帰り地図と睨めっこしていたのだが、どこをどう走ったのかは分からなかった。

あんな道を走るとよくある事なのだけれども。

現在はナビを装着しているのでどこを走ったかわかるのだけれども・・・。惜しかったなぁ。、あんな経験なかなか出来ないし。

場所さえわかればまた行きたいね!!